ユキと月島の2週間

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ユキ「どこ見てんのよ?私はここよ」 愛しい声に引き戻され、月島は飛び起きる。 月島「っ!」 傷口に激痛が走り、月島は傷口を押さえた。 しかし、自分で傷口を押さえるより先に、ユキが押さえていた。 ユキ「バカね。横になって」 静かに横になると、いくらかは痛みが落ち着く。 ユキは、月島の傷口のガーゼを見る。 ユキ「ガーゼ取り替える。 ついでに、身体も拭くわ。汗びっしょり。 ちょっと待ってて」 ユキは、そう言うと、部屋から出て行った。 しばらくして戻って来たユキは、重そうに大きなバケツを持っている。 月島「何事だ?」 ユキは、ベッドの横に、ドスンとバケツを置く。 ユキ「ここの旅館の温泉よ。 温泉には、傷を癒す力があるのよ」 バケツからは、湯気が立ち込める。 月島「熱そうだ」 ユキ「まあね。 裏手に源泉が流れてるの。 温泉卵が出来るのよ。 雪を少し入れてきたから、大丈夫」 ユキは、タオルをバケツに入れて、絞る。 そして、上半身裸になった、月島の背中にタオルを広げてあてる。 月島「やっぱ熱い。 でも、気持ちいいもんだな」 ユキ「でしょ? このくらいじゃなきゃ、すぐに冷めちゃうのよ」 熱々のタオルで、しばらく月島の背中を蒸す。 ユキ「腕とか、前は自分で拭けるでしょ? はい、タオル」 ユキは再び、タオルを絞ると、月島に渡す。 タオルを差し出すユキの手は真っ赤だった。 月島「!?」 ユキ「何?」 月島「手が真っ赤じゃないか」 ユキ「熱いお湯を触れば、そりゃ赤くもなるわよ」 月島「自分でやる」 ユキ「琉生が自分でやろうとすると、ろくなことになんないから、結構よ」 ユキは消毒の準備を始めた。 準備が整うと、ユキはバケツの中に手を入れる。 ユキ「ちょうどいいわ」 月島「消毒は?」 ユキ「するわよ。でも、その前に」 ユキは、バケツを持つと、ベッドの端に座る月島の足元に持って行く。 ユキ「即席足湯よ。足をバケツの中に入れて」 .
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