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王国軍第9艦隊が防衛第4艦隊に向けて進軍を始めると同時に、地上の機甲部隊も行動を始めた。
「渓谷を左回りに進軍する。空の若造に戦車の戦いを見せてやるぞ」
王国軍第9艦隊付機甲師団の師団長ヒルヴィが指揮下にある機甲師団に前進を命じた。
王国軍の主力戦車ペイヤイネン中戦車が固い地面を踏みしめながら進み始めた。
「この先に窪地があるそうだ。それを利用させてもらおう。戦列を伸ばしつつ窪地まで進め」
命令が下ると、隣の戦車との車間が広がり、戦列が伸びたことが確認できる。
「もう少しで窪地だな。全軍、稜線の手前で待機だ」
そして敵が窪地に入ったときに、こちらに連絡するように、通信手を通じて頼んだ。
「後は待つだけだ」
ヒルヴィは軍帽を脱いで、髪を整えて時間を潰した。
「空から連絡です。敵戦車部隊が窪地に侵入しました」
それを特に驚きも喜びもせず聞き終えて、軍帽を被りなおした。
「ようやくお出ましか。全機甲師団に命じる、前進せよ<パンツァー・フォー>!」
ペイヤイネンが動き出した。
急斜面の荒れ地を、転輪を軋ませ、車体を揺らしながら登っていく。
稜線にたどり着くと、王国の全車両が停車して攻撃命令を待った。
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