新米提督の初陣

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アルフレート・フォン・バスラー少将はブリッジの指揮官席で命令を待っている。 アルフレートは10日前に少将に昇進すると同時にトゥオネラ王国軍第9艦隊司令官の職に任命されたばかりだ。 どこの国でも中将が艦隊司令官だが、年齢などの特殊な理由によって例外的に少将であるアルフレートが指揮官を務めることになった。 アルフレートは今年で21歳。 艦隊司令官を務めるにはあまりに若すぎるので、周りから疎まれ、幕僚は指揮官を軽んじて指示に従わないこともありうる。 上層部にとっては恩を着せているつもりでいるだろう。 実はアルフレートは隣の大国で、敵国でもある北大陸の覇者ニブルヘイム帝国からの亡命者で、亡命する以前は皇位継承権第2位の皇族だった。 そういう身分ということもあり、帝国を降伏させた後に傀儡皇帝として即位させるつもりで、今のうちに手なずけるためにこのようなことをしているに違いない。 未来の皇帝かもしれないバスラーが王国に亡命することになったのは、アルフレートの伯父であるニブルヘイム帝国皇帝アドルフが崩御した時点で皇太子が不在だったことが原因だ。 アルフレートは周りの重臣に担がれて、現皇帝のエアハルト・フォン・バスラーと対立することとなり、その結果アルフレート派の重臣たちがクーデターを決行した。 しかしクーデターは失敗に終わり、アルフレートは叔父と妹のイレーネとわずかな従者と共に、北の隣国であるトゥオネラ王国に身を寄せることになった。 その後、伯父の意向で王国の士官学校に入学、そして首席で卒業後は国境地帯で地上部隊の一員として帝国軍との小競り合いを経験した。 少佐になってからは艦隊勤務となって今に至る。
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