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気づけば、少年らは獣的な赤い二つの光に囲まれていた。
女は関節を無視した動きで身体をねじり第二撃を繰り出す。月の光を跳ね返す鋼の凶器は宙を舞い、血の気を感じさせない細い腕はあらぬ方向へ曲がり凶器のように鋭く尖った白い骨を覗かせる。
血の気を感じさせない女に比べ、こちらは感情を感じさせない無表情の少年は、腕が折れてなおも襲い掛かる女の首を無慈悲に蹴り抜き吹き飛ばす。
「く、くははははハは!」
男はなおも笑う。
「かつての同僚をなんの迷いもなく蹴り飛ばしやがった」
吹き飛ばされた青服の女は、他の赤目の後ろで立ち上がろうと悶えて痙攣している。
「……同僚? なんのことだ」
「気づかないか? お前が今蹴り飛ばした女、服装……見覚えがあるだろう」
そう、兎を追って追い詰められたお前の同僚だ。
少年は、女の青い、特徴的な制服を見て「あぁ」と声を漏らした。
隣町の婦警だ。顔は最早見れたものではなかったが、おそらくは新聞に書かれていた行方不明の婦警だろう。
と、先程まで地面に血を捧げていた女の死体が、糸に吊り上げられたように起き上がった。
赤い瞳で猟犬を睨み、主の盾になり立ち塞がった。男は笑う。
「あぁ……おれ達は警察じゃあないぞ」
男の笑い声が、止む。
警察じゃ、ない?
「……アリス」
少年は懐から取り出した仮面を端整な顔に添える。
アリスと呼ばれた少女は、今まで閉じていた唇をゆっくりと開いた。
「器は用意した。不思議の国をさ迷う仲間を、右手を差し延べ迎え入れろ。左手を掴み引きずり落とせ。No.17」
「「赤い靴の脚無し少女」」
二人の言葉は重なり、少女の身体から伸びた光は仮面へと宿った。
赤い瞳の死体人形が、一斉に二人に向かい飛び掛かる。
「三月兎を、回収する」
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