あたしは千景

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あたしは言われた通り、おとなしく待っていた。 特に何もない殺風景な部屋だから、 何もすることがない、っていうのも理由の1つ。 あとは、やっぱり怒られたくないから。 じっと待ってたんだよ!ってアピールしたら、 もっと優しくしてくれるかもしんないし。 そんな事を考えていたら、不意に障子が開いた。 …あれ? 「どうしたの…?」 そこには御膳を抱えた、お偉いさんの姿があった。 ご飯を食べ終えるには早すぎるし… 御膳抱えてるし… 先にあたしのを持ってきてくれたとか? 不思議そうに見つめるあたしから、視線を外し、お偉いさんはゆっくりと口を開いた。 「…一人で食う飯程、不味いもんはねぇからな」 「うん…?」 「此処の飯が不味いとか思われたら腹立つからよ…」 「……」 「今日は此処に来て初めての飯だし」 「…」 「…一緒に…一緒に食ってやる」 なんだ。 本当に総司くんの言う通りの人だった。 照れ臭そうに告げるお偉いさんの姿が、 泪に滲んで、よく見えなくなってしまった。 「馬鹿っいちいち泣くんじゃねぇよ…」 無器用な優しさに、泪が止まらなかった。 あたし、大丈夫だよ。 あたし、この人のこと、 もう大好きだ…!!
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