あたしは千景

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「…あんたは、あたしのこと何もきかないの?」 夕飯を食べ終わったあたし達は、温かいお茶を飲みながら、食後の一服。 猫のあたしは、勿論冷めてからじゃないと、飲めないけど。 「別に…話したくなったら、話せば良いんじゃねぇの」 「……そうだけどさ」 「なんだ?今話したいっていうんなら、聞いてやるぜ?」 「いまは…いい」 あたしがそう言うと、お偉いさんは、あっそ。と素っ気なく答えるだけだった。 少しの沈黙が流れてから、先に口を開いたのはお偉いさんだった。 「俺はさ、…俺の名前は、土方歳三ってんだよ」 「としぞう…?」 「おう。だから、あんたじゃなくて…名前で呼べ」 「う、うん。としぞう」 あたしは呆気にとられて、思わず呼び捨てで呼んでしまった。 でも、お偉いさんは…歳三は特に気にする様子もなく、言葉を続けた。 「それでだ。…色々考えたんだけどよ。……ち、…千景なんてのはどうよ?」 あたしは何の事かさっぱりわからず、首をかしげてみせた。 「あ~…だから、、、名前だよ」 あまりにも小さな声で言うもんだから、 全然聞こえない…! 「え?」 「だからぁ…名前だよ名前!お前の名前!」 「…え?」 あたしの、名前? 「お前は、此処に来るまでに、色んな景色を見てきたんだろ?…綺麗な景色も汚い景色も」 「……」 「汚ねぇ人間たちも。…だけどな、これからはお前に、今までとは全く違う景色を見せてやる」 「俺と、俺の生き様を思う存分見せてやる。……つーのはまぁ、冗談で。お前にはこれからも沢山の景色を見て欲しいって思ってよ」 「だから、千に景色の景で千景(ちかげ)。…良い名前だろ?」 沢山の景色を… 見ても良いの? そんな素敵な名前を、あたしにくれるの?
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