聖夜に乾杯

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「いきなりこんな事言われても気持ち悪いですよね……でも僕、仕事中裕美子さんに一目惚れしたんです。それを伝えるのが遅くなってしまった、それだけなんです」 【必死】――そんな表現がぴったりな形相で、彼は私に想いをぶつけてきた。 「堂場(どうば)さんと交際されている事は、初めから知ってました……というより、裕美子さんと堂場さんが交際していたからこそ僕が貴女の事を知ったんです」 マサユキの事も知っているらしい、と私はぼんやり思う。 狂言などではなく、本当に知っている。 一体この男は何者なんだろう。 彼の言っている事は真実なのだろうか。 だとしたら、誠治さんのバーで私がアクシデントによって話し掛ける迄何もしてこなかったのは何故なのか。 疑問ばかりが次々浮かび、一つ一つに答えが見つかるより先に消えていく。
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