シングルナイトキャップ

聖夜に乾杯

「酷いわ、ひとりぼっちのうら若き女性の周りをクリスマスカラーで飾り立てようとするなんて」

芝居がかった口調で嘆いたのは、ほんの少しが本心で。

仰々しい位のイルミネーションと共に街を彩る赤と緑のデコレーションに唆されるかの様に注文してしまった高級な筈のロゼも、飲む程に頭が冴えていくだけの気がしてどうにも虚しい。

「ねぇ誠治さん」

五十路も半ば、親子ほども年齢が離れているマスターを名前で呼ぶ。

思ったよりも響いた呼び掛けに、今の今迄互いに睦言を交わし合っていた店内のカップル達がこちらを向いたのを私は雰囲気で察知した。

何よ、独りでバーのカウンターに陣取ってマスターに愚痴ろうとしている三十路目前のオンナがそんなに醜いか。

ふんだ。　　　　　　　　　　・・・
私はあんた達と違ってデレデレ酔ってなんかいないんだから。