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「ありがとうございました」
背後で聞こえた声に振り返ると、先程から私の気分をささくれ立たせていたカップルがレジスターを挟んでマスターと向かい合っていた。
「カード、使えますよね」
男が財布からプラスチック片を出す。
真新しいブランドものの財布。
隣に寄り添う女が、クリスマスプレゼントとして買ったのだろうか。
「ええ、少々お待ち下さい……では此方にサインを…えっと此方です、この上の」
慣れない様子の男の態度に、私は他人事ながら苛立った。
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――彼ならそんな事は無かったのに。
無意識に思い、それから私はすぐに後悔してからスツールの向きをジントニックの男の方へと戻す。
グラスの淵に飾られた「収まりの良い」ライムを注視している彼の姿を見ていると、後ろでレジスターの閉まる音がした。
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