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「さぁ?俺には分かんね~けどマジで心配してたぜ?なぁ、姫ちゃん」
龍之介は後ろの席で分厚い小説を手に持ち読書に没頭している二人目のツレ、姫宮颯士に話掛けた。
「その呼び方はやめろって言ってるだろう。それに別に心配はしていなかった気がするが」
素っ気なく冷たい返答に、龍之助はふざけて颯士に抱きつく。「え~心配してたじゃんあれ。ねぇ姫ちゃ~ん」「離れろ、気色悪い」確かに気色悪いな。
それよりも。
「颯士にも言って来たのかよ?」
「あぁ、俺と龍之助が一緒にいる時に言って来た」
「ま、俺達は常に一緒にいるもんね~♥」
「お前は黙れ」
……まじで何考えてるんだあの女。
「…ねぇ、正義」
名前を呼ばれて反射的に振り向いてしまう自分が憎い。そこには彩葉が立っていて、今にも泣きそうな顔をしていた。
「ご免なさいっ!!」
いきなり頭を下げられ謝罪される意味が分からず、僕は少なからず動揺した。
「どっ、どうした…?」
「あたし、全然正義のこと考えて無かった…正義、あたしが死んじゃえばって言ったから、昨日死のうとしたんだよね?」
「待て。何の話か簡潔に説明してくれないか?」
「さっき、城ヶ崎さんがあたしに教えてくれて…城ヶ崎さんあんたが屋上から飛び降りようとするとこ目撃したらしいの」
目撃も何も、すぐ後ろに居たよ。僕は耐えられず、既に何もせずに姿勢良く着席している城ヶ崎の所へ向かった。
「城ヶ崎…お前、一体何がしたいんだ?」
「何が」
「何がじゃない。何で言い触らしてるんだよ、彩葉にまで。いや、それ以前に、何で僕の人間関係を知ってるんだ」
城ヶ崎は表情を全く変えず、前に座って友達と談笑している女子の後頭部を凝視していたかと思うと、機械的な動きで僕の方に顔を向けた。
「情報は自然に脳内にインプットされてくる。だから、分かる」分からん。僕にはお前の言っていることが理解不能だ。
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