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「だ、駄目だ。無理だ。か、返してきてくれ」どうした、かなりどもってるぞ。
「お、俺、あの子苦手なんだよ」
「何でまた」お前に苦手な女なんていたのか。初耳だ。
「俺、ああゆう女子無理なんだ。サバサバしてるし、なんか怖えじゃん」
龍之助は妖怪か幽霊でも見たような青冷めた顔でそう言った。相当嫌いなんだな。…仕方無い。
「片篠。」
一人席に着いて読書をしていた片篠に、僕は封が切られた手紙を返すことになった。哀れ極まりない。
「これ、返すって龍之助が。なんて書いたのかは知らんが、偉い怯えようだぞ」
「要らないわよ。捨てていいわ。こうなることは分かっていたし」片篠は少しも表情を変えず、淡々と言葉を並べた。
………フラれることが分かっていて告白するとは、僕はお前を尊敬するぞ片篠。
教室の隅にあるごみ箱に手紙を捨てようとして、その手を止めた。
別に興味がある訳ではないが、どんな内容だったのか確認しても罰は当たらんだろう。
僕は封筒から折り畳まれた便箋を取り出し、それを開いて読み始めた。
《荻原龍之助君へ
私は貴方のことを朝も昼も夜もずっと考えている。貴方のことを考えない日は無い。私は貴方のことが好きなの。何故って?だって、貴方が太った親父や、気持ち悪いサラリーマンに襲われるのを想像しただけで、興奮してしまうの。授業中だって、担任が貴方のことをこの教室で犯す妄想ばかりで、授業の内容なんて頭に入って来ない。どうして貴方はこんなに私を掻き乱すの。そうだわ、貴方が妄想の中だけではなく、実際に気持ち悪い親父に犯されればいいのよ。そうしたら、私は満足するわ。私のお願い、聞いてくれる?
片篠 紬より》
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