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「今回はラッキーだっただけだよ。敵に魔法使いがいなかったし、冒険者のレベルも高くなかったからね。あの程度の剣士と弓手に苦戦するようじゃ、全然ダメってやつ」
ユウは腕を組み、思案顔になる。
実は、ジャイアントワームは打撃に強く魔法に弱いという性質を持っているのだ。
異常なまでに肥大化させても、掛出しの剣士と相討つのが限界。もし敵パーティに魔法使いがいたら、ダンジョンの戦力は半壊していたかもしれない。
「じゃあ、もっと強い魔物を召喚すればいいだろ。ワイバーンとか。本さえあれば魔法陣は描けるし」
フールはワイバーンが気に入ったのだろうか。
ちなみに、ワイバーンほど高位の魔物は召喚できない。召喚できる魔物は、一定の強さのものまでなのだ。
まともに召喚魔法の本を読んでいないフールは、そのことを知らない。
知識を使いこなせても、知識が頭に入るわけではない。これがフールの『使役』の欠点の一つだった。
「それが出来たら楽なんだけどね。僕が魔王やってたときはダンジョンコアも有ったし、そうしてたんだけど、今はもう不可能かな」
「なんでだよ」
「いいかい? まず魔物は下位のものしか召喚できないのと、仮に中位以上の召喚できても命令を下せない。これが理由だよ。ダンジョンコアがあれば命令の問題とか気にしなくて良かったけど、実際にはこれが一番の問題だね」
ユウの魅了も一定の実力を持つ相手には効かない。おそらく全力で魅了をかけても、支配できるのはトロルかガーゴイルまでだろう。
命令の効かない魔物がダンジョンにいるとなると、マスターであるフールやユウの身すら危なくなる。
悩んだ末に出したのは、ユウとしても苦汁の決断だった。
「仕方ないね。精霊を召喚しよう。精霊なら魔力さえあればどんなに強くても召喚できるし、契約を結べば協力もしてくれるから」
魔力で体が出来ている精霊は、魔力さえあれば喚べる。しかし、常にダンジョン内の魔力を吸ってしまう。魔力は精霊の食糧であり、生命線なのだ。
現在ダンジョンにいる下位精霊のグレムリンならまだしも、サキュバスのような中位精霊を喚ぶと、かなりの魔力を吸われてしまう。
現に、ユウはけっこうな量の魔力を吸いながら生活していた。あまりに魔力の出費が増えると、マナクリスタルに魔力が溜まらなくなるかも知れない。
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