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実のところ、純潔な者には童貞も含まれる。残念ながらフールは一身上の都合により、純潔を捨ててしまっていたのであった。
あまり知られていない話ではあるが、純潔を守れば守る程、魔力の質は上がっていく。だから魔力を糧とする精霊は純潔を好むのだ。
ユウ曰く「30歳まで純潔(童貞)を守った漢(おとこ)は、最強の魔法使いになる」そうだが、異世界の迷信なので信憑性はない。
閑話休題。
魔法陣の光が収まったとき、そこにいた精霊は、ウッドウィプス。
枯れ木の枝で出来たような上半身を持ち、下半身はない。常に浮遊している枯れ木の化身だ。
ウッドウィプスは下位の精霊だが、下級の攻撃魔法や防御魔法が使えるため、なかなかの戦力が期待できる。
常に浮いているから、ジャイアントワームと共闘しても互いに潰し合うなんて事態にもならないだろう。
そんなウッドウィプスを、30匹ばかり呼び出した。
このダンジョンが森の中にあったためか、ウッドウィプスたちはダンジョン内の魔力を気に入ったようだ。
特に話がこじれる事もなく、魔力を吸う権利と引き換えに、ウッドウィプスたちはフールの配下になった。
「うんうん。上手くいったね。ここまでは予定通り。じゃあ、いっちょ気合い入れていこうかな」
ゴブリン部隊によってダンジョン内の指定の場所へと誘導されていくウッドウィプスを満足げに見ながら、ユウは柔軟体操でもするように体を伸ばした。
フールも若干、緊張した顔になる。
「あの、他にも何か召喚するのでしょうか?」
2人に漂う緊張感に不安を抱いたグネは、彼女らしくない質問をした。答えるフールは、やはり難しい顔をしている。
「さっき言っただろ。悪魔を召喚する。ウッドウィプスは精霊だからな。ここからが本番だ」
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