第2話 冒険者を倒そう!

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 グネへ、さっきとは別の魔法陣に血を垂らすよう言ったフールは、自身も本を片手に呪文を唱え始める。  なぜ精霊の中でも悪魔を召喚するのか、理由は単純だ。悪魔の方が契約を結びやすいからである。  中位以上の精霊は会話できる者が多く、精霊によってはプライドが高いものもいる。ただ魔力を吸う権利を与えるだけでは、協力してくれるか五分五分なのだ。  しかし、精霊には魔力以外に交渉のカードはない。それに比べ、人間にあだなす悪魔には、様々な交渉のカードがある。  人間の魂を要求する者、純潔な者の血を要求する者、単に戦いの場が欲しい者、性欲の強い者。与えられる物のバリエーションが結構存在するのだ。   長い呪文が終わると同時、魔法陣の中から、赤い影が現れた。  それは、オニと呼ばれる悪魔。  体躯は人間に酷似しており、身長は目測でも2メートルを軽く超えている。全身が筋肉の鎧に覆われ、赤い肌はまるで返り血を浴びたかのよう。  一切の毛がない頭部には、ユウのものより小さいが、一対の角が生える。  分かりやすく表現すると、上半身裸でガチムチなスキンヘッドの真っ赤な男である。  ユウとグネの表情が曇るのも、当然の流れだった。  オニはフールの胸回り程もある太い腕を組み、厳つい顔で彼を見下ろし、見た目に違わない低く荘厳な声を出す。 「儂を喚んだのはお主か?」 「いかにも。オニよ、我と契約を結び、その力を我に預けよ。対価は支払う」  答えるフールは尊大な口調。悪魔との契約で下手に出れば、足元を見られた要求をされる事が多いからだ。 「儂に従えと、そう言っとるんじゃな」 「そうだ」  オニは豪快に笑った。まるで、弱い人間が何を言うかと、馬鹿にしているようであった。
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