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「儂ぁ弱い者に従う気はないわな。儂を従えたかったら、強さを証明せい」
この反応は、おおむね2人の計算通りだ。力を重んじるオニは、契約の際に戦いを挑むことが多い。
「まぁまぁ、少し僕の話を聞いてよ」
ここで、ユウの出番だ。ネゴシエーター役を買ってでたユウは、微笑みを作りながらオニに話しかける。
「お前さんはサキュバスかいな。中位精霊を従えてるたぁ、ちっとは期待できるやな」
「うんうん。でもね、僕は従ってるわけじゃないよ。僕と彼は同盟を結んだ、言わば盟友なんだ。一緒にダンジョンを作って、世界をメチャクチャに引っ掻き回そうって考えてる」
「ガハハ! 世界ときたか! そいつぁ壮大やな」
笑うオニに好感触を掴んだと踏んだか、ユウはさらに舌を回す。
「でも、僕たちは最近ダンジョンを作り始めたばかりでね。戦力が足りないんだよ。そこで、君だ。オニの戦闘力が必要なんだよ。どうかな? 僕らと盟友になって、一緒に世界を手に入れないかい?」
「面白そうだが、駄目やな。世界を目指しとるなら、儂を力で捩じ伏せて従えるくらい、やってみせんかい」
「いやいや、よ~く考えてよ。上下関係より協力関係の方が、何かと禍根もなくて楽でしょ? 上下関係になったら最悪、君は僕らに好きなように使われるんだよ?」
「儂ぁ馬鹿だから、そっちの方が楽じゃ。儂を倒せる奴なら、従う価値もあるってもんだわい」
ユウは頭を抱えた。このオニはユウの想定以上に脳筋だったのだ。
「……分かった。相手をしよう」
「ちょっとフール! 何を言ってるんだよ! 台本にない行動しないでよ! 今のダンジョンにオニを倒せる戦力なんてないし!」
ユウの制止の言葉も聞かず、フールはオニの目の前まで歩み寄った。
「お前は、強い敵と戦いたいのか?」
「おうさ」
ニカッと笑って頷くオニ。フールは自分の左手の甲をナイフで切って、笑うオニに差し出した。
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