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「おいコラ勇者。そんな能力があるんなら早く言えよ。そしたら、ダンジョン作りも大分変わってくるだろ」
ユウはかなり冷たい口調で言う。凄んだ美女ほど怖いものはないと、フールは内心ガタガタ震えた。
「……いや、逆になんで知らないんだよ。俺はこの能力でお前の、魔王のダンジョンを突破したんだぞ」
「え?」
ユウがポカンとする。つられてフールもポカンとした。
「えっと……僕、一撃で殺されたから覚えてないんだけど」
「あ……なんか、ごめんな」
微妙に気まずくなってしまった。2人が気にしていないから深くは考えなかったが、殺し殺されをした過去は、なかなかハードである。
グネはどうしていいのか分からずに、おろおろしている。彼女はここで初めてマスターの名前がフールであり、勇者だと知ったのだ。ユウが元魔王だということも、同様に。
「まぁ、うん。次からはその能力に頼ることもあるから、よろしくね。僕は今のうちにオニの体に契約を刻んでおくから、フールはもう休んでていいよ」
「あ、ああ。分かった」
フールはそそくさと藁のベッドに入ろうとして、グネを放置していた事を思い出した。
「あー、グネ。下がっていいぞ」
「はい。その前に少し、質問をよろしいですか?」
頷くフールに、膝まずきながら、グネが問う。
「主様は勇者フール様で、ユウ様は元魔王様。これに間違いはありませんか?」
フールはギクリとして、そういえば教えてなかったかと思い直し、真顔で答える。もうこの際、全て打ち明けようと思い立ったのだ。
「そうだ。そして、お前の父と兄を死に追い込んだのも、お前の価値観をねじ曲げ洗脳したのも、全て俺たちだ。ついでに俺が持つ膨大な魔力の正体は、こいつな」
ローブの内ポケットからマナクリスタルを取りだし、グネに見せる。かなり思い切った暴露であった。
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