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場所は移り、そこはフールとユウのダンジョンがある森の外に位置する町。
その町の酒場で、やけ酒を飲む2人の冒険者の姿があった。
「ちくしょ~、あの同性愛サキュバスめ~! 今度会ったら私の矢で蜂の巣にしてやりゅ~!」
酔って呂律が回らないのか、やけに舌っ足らずな恨み言を言うのは、エルフ族のエルメスだ。
「あはは、エルメス、あまり飲み過ぎないでな?」
その隣に座るマイクは、治療魔法で治ったばかりの腕を気遣いながら、苦笑いで酒をちびりと飲む。
「お前ら、災難だったなぁ。まさかあの森にサキュバスがダンジョンを作ってるたぁ、思いもしなかったぜ」
マイクとエルメスを慰めるのは、森の中で力尽きていた彼らを救出した冒険者パーティの一人、ゾルゲ。
立派な髭をたくわえた筋骨隆々の大男で、背中にはどでかい斧を担いでいる。
「魔王が死んだことで、力のある魔物や悪魔がダンジョンを作り始めたのかもな。これは、調査が必要だ」
冷静にマイクたちが敗れたダンジョンについて考察するのは、ゾルゲのパーティメンバーであるナキア。
薄い金髪を一つに束ね、凛々しい顔つきをした魔法使いの女性だ。彼女はパーティの頭脳係でもある。
「でも、ダンジョンの主はマスターとかいう人間の男なんすよね? 人間がサキュバスを使役してダンジョンを作ってるとしたら、もしかしたら財宝とかあるかもっすねぇ」
やや軽薄そうな声を出すのは、盗賊のヤー。盗賊といっても、冒険者の職業としての盗賊だ。彼もゾルゲのパーティの一員である。
短い茶髪をした目の細い男で、軽薄そうな口調とは裏腹に慎重で義理固い性格をしている、三枚目な青年だ。
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