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「儂の名はオニのゴッツ。フールの旦那、よろしく頼んますわい」
体も全快し、契約も刻まれたオニは、胡座をかいて頭を下げた。
契約とは精霊や悪魔を構成する魔力に直接呪を刻むことで、いろいろな誓約を加えること。
例えば、今回でいえば、『オニはフールとユウにいかなる危害も加えられない』や、『オニは自分の生死に関わる命令以外は聞かねばならない』などだ。
「ああ。ゴッツ、急で悪いが、お前には今から仕事をしてもらう」
右側にユウ、左側にグネを侍らせマスターの椅子に座ったフールは、真面目な顔でユウの書いた地図を眺めていた。
「ユウと共に森の中へ行って、魔物たちが巣をダンジョン内に移すよう、説得してくれ。力付くでも構わない」
「そういうわけだから、よろしくねん」
フールとユウの言葉を聞き、ゴッツは力こぶを作ってみせる。
「おうさ。任されたわい。ユウの姉御、さっそく行きましょうぞ。腕がなるやな」
ガハハと笑いフールの部屋を後にするゴッツと、ニヤニヤしながらそれを追って飛んでいくユウ。
(あいつら……大丈夫か?)
心配になるフールだったが、あえてスルーしておくことにした。突っ込んでも無駄だと思ったのだろう。
「フール様、私たちはどうしましょうか?」
「……ダンジョン内の整理でもしておくか。魔物の住居区の区切りを、もっと厚くしておこう」
フールとグネは立ち上がり、ダンジョン内へ歩いていった。2人でグレムリンやゴブリン部隊の指揮にあたるのだ。
森の中に入ったユウとゴッツは、地図を見ながら魔物の巣を探していく。
「まずは一番近いトロルの巣に行こうか。ガチムチは睨みを効かせてて。僕が魅了で支配するから」
「ユウの姉御にそんな面倒はかけさせんわい。トロルなんぞ儂が一喝して動かしてみせるわ! ガハハ!」
「うわー、頼もしー」
ゴッツの言葉を半信半疑で聞いていたユウだったが、実際にトロルの巣についてから、目を見張ることになる。
並みいるトロルたちを前に、仁王立ちで腕を組んだゴッツは、大気を震わせる声で叫ぶ。
「こわっぱ共おおおおお! 聞けええええい! 貴様らはダンジョンに住まい、その力をフール様の為に奮うのじゃあああ! 文句を垂れる奴はここに出ろ! 儂が叩っ潰してやるわい!」
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