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まさに気合い一喝。トロルたちは蛇に睨まれた蛙のように、瞬時に大人しくなってしまった。
ユウはゆっくりとゴッツの方を振り向き、ぎこちない口調で言う。
「お前は化け物か」
「ガハハ! そう褒めんといてくれや」
「いやいや、褒めてないから」
なんて軽口を叩きながらも、ゴッツという頼りになる存在に、ユウの顔はほころんだ。
ダンジョン作りは彼女の唯一の生き甲斐であり、最高のゲーム。駒が強いに越したことはない。
(この調子なら、ダンジョンコアがなくても本当に世界を掌握できるかもね。最大の障害である勇者も味方につけられたし。アハッ、楽しくなってきたねぇ)
この時のユウが邪悪なようで無邪気な笑顔を浮かべていることに、ゴッツは気づかなかった。
ユウはトロルの1匹にダンジョンまでの道筋を教え、地図を開いて次の場所へと移動を始める。
「さぁて、ガチムチ、次はウルフの巣だよ。ウルフは警戒心が強いから、脅しすぎないようにね」
「了解じゃあ。ときにユウの姉御。そのガチムチってのはどういう意味なんですかい?」
「……強い漢(おとこ)って意味だよん!」
筋肉が、とユウは言外に付け加えておく。
「おお! いいですな! 今度から儂ぁ、ガチムチのゴッツと名乗るぞ!」
「半端ない自己紹介だね」
ユウとゴッツは雑談をしながら森を進んでいった。
その日、森の中に住む魔物の約10分の1がフールのダンジョンの住民となった。
彼らにはゴッツの恐喝とユウの魅了を使って、フール、ユウ、グネ、ゴッツの4人には危害を加えられないようにしている。
これにより、ダンジョンの戦力は一気に強化されたのだった。
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