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しばらくジャイアントワームを観察していると、体の表面がボコボコと波うっているのが分かる。
ニキビのような出来物のような脹らみが随所に現れ、風船のように膨らんだそれは、パンと軽い音を立てて弾けた。
ニキビのようなものと言っても、フールの拳くらいの大きさだ。弾けた後からは、血が噴き出す。
痛みに目を覚ませたジャイアントワームがのたうちまわる。パン、パン、パンと次々にニキビのようなものが弾けていった。
結果、爆散こそしなかったものの、魔法陣の上には原形を留めなていないジャイアントワームの残骸だけが残る。
(おしい……のか? ニキビさえ出来なかったら、なんとかなるかもしれない)
水の魔法と風の魔法でジャイアントワームの残骸を洗い流し、フールはダンジョンの方へ戻っていった。
魔物たちが忙しなく働くダンジョンを進み、グネを見つける。
「グネ。シャーゴブリンで治療魔法が使える奴を何匹か貸してくれ。あと、ウッドウィプスも適当に。忙しいなら、構わないけど」
いきなりフールが来たことで驚いた様子のグネだったが、彼の言葉となればもちろん快諾。
治療魔法が使えるシャーゴブリンとウッドウィプスを3匹ずつ借りたフールは、それらを連れて魔法陣の部屋に降りていった。
あまりに魔力が濃厚なその部屋に、シャーゴブリンは顔を青くし、ウッドウィプスは身体中で歓喜を表現する。
再びその場にジャイアントワームを召喚し、睡眠の魔法をかけてから、フールはシャーゴブリンとウッドウィプスに向き直った。
「今からこのジャイアントワームを魔法陣の上に乗せる。シャーゴブリンはジャイアントワームの治療をしてくれ。タイミングは、見ていれば分かる。ウッドウィプスはシャーゴブリンに魔力を渡してやってくれ。魔力は、この部屋のものを好きに使っていい」
精霊であるウッドウィプスはユウやゴッツのように、魔力の受け渡しができる。これならシャーゴブリンたちの魔力が切れることはないだろう。
この部屋には、以前の魔王の間に近い魔力が渦巻いているのだから。
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