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気持ち前屈みになったフールは、恨めしそうにユウを睨む。顔が真っ赤なので、全く迫力がないが。
「壁を壊したことは、カブトムシの件でチャラにしてあげるねん。じゃあ、僕はこのカブトムシたち用にボス部屋を作りに行くから」
フールの視線を華麗に無視し、ふわふわと飛んでいくサキュバス。
ため息を吐くフールの肩に、優しく雄カブトムシが足を乗せた。魔物に慰められる勇者。実にレアな絵面だ。
その翌日。
多様な魔物に、一部の精霊。地下に広がる迷宮。最奥に鎮座するボス。今ここに、森のダンジョンはひとまずの完成を迎えた。
森の側の町。そこには、5人の冒険者が森に向かって勇敢に進む姿があった。
「マイク。腕の方はもう大丈夫か?」
問うのは斧使いのゾルゲ。立派な髭と筋骨隆々な体つきは、彼がベテランの冒険者だと物語っている。
「ええ。もうすっかり良くなりました。足手まといにはなりませんよ」
答えるは剣士のマイク。先日の雪辱を晴らすため、今日の彼は英気に満ちていた。
「前衛が増えるのは、私としてもありがたい。期待しているぞ」
マイクに発破をかけるように声をかけるのは、魔法使いのナキア。いつもながら凛々しい空気を発する彼女は、中級魔法をも使える秀才。
「ま、気楽にしきましょうや。気張り過ぎも良くないっすよ。ね、エルメスちゃん?」
軽薄そうな声で皆をリラックスさせるのは、盗賊のヤー。軽薄そうに見えて誰よりも堅実な彼は、見た目と違って頼りになる。
「は、はい。あのサキュバスだけは、私が倒します!」
幼げな声で返事をする、弓手のエルメス。大切なものを奪われた彼女は、怒りに燃えている。エルフ族は貞操観念が強いのだ。
ここに集ったバランスの良い臨時パーティは、迷いない足取りで森のダンジョンを目指していく。
そこで待ち受けるのは、3日前とは比べ物にならない程の、邪悪なダンジョンであるとも知らずに。
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