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マイクとエルメスの案内の元、ダンジョン前に到達した冒険者一行だったが、その光景を見て皆が絶句する。
ダンジョン前の一帯は木が切られ、ダンジョンの入口と思わしき場所には禍々しい装飾がなされていたのだ。
ここはダンジョンです! と自己主張しているかのような景色に、誰もが言葉を失った。
「舐めてるのか? いや、我々の油断を誘っているかもしれん」
ナキアが生真面目に思考をめぐらせるが、それは的外れだ。
このダンジョンを設計した悪魔は、「雰囲気って大事だよねん」という言葉のもと、この装飾を作らせたのだから。
「俺たちが来たときは、こんな馬鹿げた装飾はありませんでした。なぁ、エルメス」
「うん。あの時は、血の臭いが酷いだけの、ただの洞窟みたいだったのに……」
以前ここに来た2人は、あまりの変わりように混乱する。しかし、彼らは冒険者。この程度で冷静さを失うような失態はしない。
「入口付近に罠はないみたいっすね。中はどうか分からないっすけど」
盗賊のヤーは罠などの探知や解除に長けている。素早く周囲の安全を確認し、皆に手で合図を送った。
「どうやらダンジョンは、かなり様変わりしてるようだな。だが、たった3日じゃ戦力はあまり変わってねぇだろ。行くぞ」
リーダーのゾルゲが促し、5人はダンジョンの中に踏みいった。
その様子を森の木陰から見つめるのは、1匹のドラゴンフライ。まんま巨大な蜻蛉(トンボ)の姿をした魔物である。
ドラゴンフライは自分たちの巣があるダンジョンへ侵入者が来たと、人間には聞き取れない高周波の警戒音を出すことで、仲間に知らせる。
ダンジョン内にいた別のドラゴンフライがその信号をキャッチし、さらに別の仲間へ伝えようと警戒音を発す。
その高周波の音が嫌いなウルフが、ドラゴンフライを唸り声で威嚇し、唸り声に驚いたマッドモンキーたちが騒ぎ始めた。
それらは連鎖的に様々な魔物の反応を巡りめぐって、最終的には魔物全体の指令を務めるグネの耳へと入ることになる。
これぞフールとユウが協同で考案した、魔物による侵入者探知ネットワークである。
それぞれの魔物の特性を活かし、侵入者があれば自動的にダンジョン全体へ伝わるようになっているのだ。
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