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早々に雑談を終え、注意深く進む5人の前に、暗闇から数匹のドラゴンフライが現れる。
空中から迫る敵にエルメスが弓を向け、シュッと放たれる数本の矢。それらは的確に、ドラゴンフライの頭を貫いた。
しかし、時間差で飛んできたドラゴンフライへの反応が遅れる。マイクの剣やゾルゲの斧が届かない高さから、彼女に向かって急降下するドラゴンフライ。
避けられない! とエルメスが身構えるも、彼女の後ろから投げられたナイフが、見事ドラゴンフライの首を切断してくれた。
「いやぁ、エルメスちゃん、凄い命中率っすね~。でも、油断大敵っすよ」
片手でナイフを弄びながら、ヤーはただでさえ細い目をさらに細めて笑顔を作る。
「ありがとうございます、ヤーさん」
「お礼なんかいいっすよ。臨時とはいえ、仲間っすからね」
ヤーは口笛交じりにナイフを上着の中にしまい、頭の後ろで手を組みながら先に進んでいった。
一見無防備に見える体勢だが、いつでも襟に仕込んだナイフを取り出せるよう計算されたポーズだ。腕を振り上げた状態なので、ナイフを投げるまでに必要な時間も短縮できる。
このそつのなさが、彼がいかに場馴れしているかを言外に表していた。
頼れる3人に囲まれ、自然と顔がほころぶマイクとエルメス。
緊張の中にも余裕が生まれ始めた5人は、狭い通路にたどり着く。人一人分の幅しかない、 細い道だ。
「罠とかあるかもしれないんで、自分が先頭を歩くっすよ」
「そんじゃあ、殿(しんがり)は俺がやろう」
2人がそう言い、ヤーがひょろっと細い道へ入っていく。その後にマイク、エルメス、ナキア、殿にゾルゲの順で進んだ。
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