第3話 森のダンジョンを完成させよう!

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 冒険者の一人を殺したとの報告を受けたフールは、満足げに頷く。 「死体はゴブリン部隊に回収させておいてくれ。頭は使えないから、体だけな」  対して、ユウは不満げな様子だった。 「生け捕りがベストなんだけどね~。そっちの方がいろいろ役に立つし。まぁ、今はマンドラゴラとシャドウの連携が上手くいった事を喜んでおこうかな」  そこに、不思議そうな顔をしたゴッツが尋ねる。 「ユウの姉御、なぜさっさと殺さずに、弱ぇ連中と戦わせるんですかい? 儂やカブトムシを入口に置いた方が、早いじゃねぇですか」 「それじゃダンジョンって呼べないだろ。いいかい? ダンジョンってやつはね、人間と魔物の共存共栄なんだよ。生かさず殺さずがちょうどいいの。我欲や義勇のためにダンジョンに潜る人間と、生きるため食べるためにダンジョンを守る魔物。このバランスが大事」  曖昧に頷くゴッツ。分かったフリをしているようだ。 「奥に進べば進むほど凶悪になっていく迷宮。強くなっていく魔物。最奥には財宝を守るボス。これが理想的なダンジョンさ。冒険なんて命賭けのゲームみたいなものだからね。ゲーム制作者のダンジョンマスターは、難易度に気を使わなきゃいけないのだよん」  ひらひらと尻尾を振りながら言うユウ。冒険がゲームというのは、いささか言い過ぎではあるが、概ね間違っていない。  ゾルゲ一行も、マイクとエルメスも、地位と名声や財宝が欲しくて、冒険者をやっているのだから。 「フール様、ユウ様、冒険者がトロルと接触し、これを壊滅させました」  グネの報告に、さっきまで楽しそうだった2人のマスターは眉を寄せた。 「怒りで燃えたか。今回の冒険者は、義勇を掲げる仲良し集団のようだな」 「だね。でも、けっこう厄介だよ。トロルが出るエリアを越えたら、そこからは僕製の致死級の罠とかがあるからね。全滅させたら、ダンジョンの評判が広がらない」  冒険者がしっかり来るようになってからなら全滅させても問題ないが、ここで全滅させたら森のダンジョンの存在を知る人間がいなくなるかもしれない。 それは、ユウが最も懸念していることだ。冒険者が来ないダンジョンなど、ダンジョンとは呼べないから。 「……予定変更するしかないかな。グネ、中ボスを出撃させて。それから、治療魔法が使えるシャーゴブリン部隊を召集。牢の前に待機させておいてね」
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