第3話 森のダンジョンを完成させよう!

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「中ボス……メスカブトを使うのか」  メスカブトとは、フールが最初に生み出した方の変異魔物である。カブトムシと区別するため、便宜上そう名付けられていた。 「うん。カブトムシたちの特性も調べないといけないしね。図鑑に載ってない新種だから。メスカブトなら殺さずに無力化できるでしょ。ボスのカブトムシだと強すぎて、すぐに殺しちゃうだろうけど」  確かに、シャドウごときの奇襲で死ぬような冒険者たちが、あの雄々しい角による突進を受けきれるわけがない。  フールは納得し、グネに「やれ」と許可を出した。  その頃、ヤーを失ったゾルゲ一行は開けた場所に来ていた。  洞窟の中であるのに、ここには地面に土が敷き詰められ、草が生え、まばらにだが木も植えられている。  ちなみに、ダンジョン内は彫印が発する明かりによって、微弱だが光がある。ヤーが死んだ細い道など、場所によっては真っ暗なところもあるが。  しかしここは、明るすぎた。グレムリンによって、天井に明かりを発する簡単な魔法陣が刻まれているからだ。  暗く禍々しいダンジョンの中で、昼間に近い明るさと森の中のような景色のこの空間は、どこか奇妙に感じられた。 「……木には触れんなよ。何があるか、分からねぇから」  先頭を歩くゾルゲの言葉に、残りの3人が頷く。  平和な光景が、いやに不気味だ。嫌な予感をひしひしと感じながら、ゾルゲたちは進んでいく。  4人がちょうど森のようなエリアの中心に来たとき、ドスンと音を立てて、来た道が大岩に塞がれた。 「チっ、やはり罠だったか!」  もしヤーがいれば、入口に仕掛けられた罠に気づいていたかもしれない。だが、無い物ねだりをしても仕方がないと、ゾルゲは残された出口の方を睨む。  そちらの方から、今まで感じた事のないまでの、重厚な威圧感がただよってきたのだ。  そこから来るであろう魔物は、ただ者じゃない。4人はそう確信し、それぞれが武器を構える。
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