第3話 森のダンジョンを完成させよう!

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「ぬううううううううん!!」  メスカブトとの衝突は想像を絶する衝撃で、ゾルゲの二の腕から血が噴き出す。力みすぎて血管が切れたのだ。  強化魔法を使った上にそこまでの傷を負ったが、なんとかメスカブトを止めることに成功した。 「こっちだぁ!」  メスカブトの標的を後衛の2人からずらすため、マイクは無駄と分かっていても果敢に剣を振るう。  鎧のような胴体ではなく、脚を狙ってみるが、それも弾かれてしまった。  痛みはないが鬱陶しいと感じたのか、メスカブトはその脚の1本を使ってマイクを薙ぎ払う。  先端の鈎爪は剣で防いだのだが、その威力に2メートル程地面を転がるマイク。 「マイク!」  地面に倒れたマイクに駆け寄るエルメスは、気休め程度の治療魔法を彼にかける。 「調子、乗るなぁ!」  マイクが体を張って作ってくれた隙を最大に使うため、ゾルゲは地を蹴って跳び上がり、強化された筋力に重力も加算した、重い一撃をメスカブトに叩き込む。  いかに鋼鉄の殻をもってしても、さすがに少しは効いたのか、メスカブトはゾルゲと距離をとるように、後ろに跳んだ。  追い撃ちをかけるはナキアの魔法。先程と同じ火球だが、今度のは攻撃目的ではない。  ゾルゲが攻撃するための、目眩ましだ。 「うおおおおおっ!!」  気合いと共に降り下ろされた斧の一閃。それは、メスカブトの脚のひとつに命中し、ボキッと叩き折った。  勝てる! 起き上がったマイクも含め、4人が希望を抱いた時。  鋼鉄の殻が、開いた。  メスカブトの胴の部分の殻が左右に開き、まるで翼のようになる。殻の下からは、透明に近い薄い羽が延びてくる。  異世界のものとは言え、カブトムシを知るユウなら、この行動にも驚きはしなかっただろう。飛ぼうとしているだけの、当然の行為だ。  だが、この4人は知らない。メスカブトの急な変化に唖然とするのは、無理もないことだった。
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