第3話 森のダンジョンを完成させよう!

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 ここで注意すべき事は、カブトムシは歩くのと飛ぶのでは、圧倒的に速度が変わるということだ。どちらが早いかなど、言うに及ばない。  そして、飛んでいるとはつまり、ただでさえ強力な突進に、速度と重力が加算された事を意味する。  その結果がどうなるか、火を見るよりも明らかであった。 「フール様、終わりました」  メスカブトを連れたグネが、牢の前で待つフールとユウの元へと戻ってきた。  メスカブトの背中には、手足が有らぬ方向に向き、死体のように動かなくなった4人の冒険者が乗せられている。 「グネ、伝令を任せて悪かった。メスカブト、ご苦労だったな。ん? お前、脚が折れてるな。すぐに治療させよう」  フールが目線を向けると、待機していたシャーゴブリン部隊がメスカブトに治療魔法をかける。  7匹がかりの治療により、瞬く間にメスカブトの足は元通りに回復した。 「にゃはは、フールは優しいねぇ。で? ちゃんと全員生きてるかな?」 「はい、ユウ様。危篤状態の者もいますが、すぐに治療させれば問題ないかと。冒険者として復帰できるかは、分かりかねますが」 「いいよいいよ。復帰しようがすまいが、生きてこのダンジョンの事を広めるのが、こいつらの仕事だから。じゃあ、ちゃちゃっと治療しちゃって。魔力が足りなくなったら、僕が補給してあげるからねん」  ユウがシャーゴブリン部隊にウインクして、冒険者を治療させていく。  ついでに、冒険者たちの持ち物や装備は全て剥ぎ取られ、フールの部屋の棚の中へ押し込まれた。  無事に一命をとりとめた冒険者たちは、裸同然の格好のまま、牢に繋がれる。  これにて一連の騒動が終わりを向かえた。グネとゴッツが事後処理に向かう中、フールの部屋では、勇者とサキュバスが向かい合って話し合いを始める。 「どうだったかな、フール。ダンジョン作りの感覚は掴めた?」 「ああ、なんとかな。これが、基礎中の基礎なんだろ?」 「うん。一部を除けば、だいたい力のある魔物や悪魔と同じ作り方のダンジョンだよ。戦法や罠もあまりない、ゴリ押しな感じだね。練習がてらに作ったダンジョンにしては、カブトムシとかのせいで凶悪になったけどね」
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