第二話

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ぶわっと、威圧するかのように大きい悪いタイプの気配がする。 真っ黒で、…どこか、悲しいような。 なんなんだ、なんなんだ一体。 …気配はすごい勢いでどんどん近づいてくる。 もしかして、俺の所に来てる…? うっすらと、冷や汗をかいたおでこを左の服の袖で拭く。 右手にはもうバッチリ符を持ってる。 臨戦態勢は完了。 いつでもこい。 緊張しながら、ドアを見つめる。 それからまもなくコンコンっとドアのノック音が聞こえ、その後ノブが動いた。 黒い煙のような物が見えた。 (来る!!) 符を構え、発動しようと符に気を巡らせた所で、聞き覚えのある声がした。 「ス、スイー……」 帝斗の声だ。しかし、あまりにも悪霊など、怨み辛みの気が引っ付いており、真っ黒で陰陽師の俺にはそれらで帝斗の姿が見えなくなっている。 なにこれヤバイ。 「…な、なに。どうしたの。」 「…よ、っハァ…よく、わか、んないん…だけど……な、ん…っだか…体が、変…っ。」 辛そうに、途切れ途切れに帝斗はそう言うと、フラりと帝斗の体が傾いた。 とっさに、黒い煙を身体中に引っ付けた帝斗(だと思う)を抱き止める。 ……あ、ヤバイと気づいたのはは抱き止めてからだった。 グラッと、俺の視界が揺れる。 そして、バタンっという音と一緒にくる背中への衝撃。 一瞬、息が出来なくなるほどの激しい痛み。 そして、体にかかる人一人分の重さ。 ……あぁ、もう勘弁して欲しい。 押し倒された。 俺の首に付けている魔方陣のペンダントのおかげで、あんだけあった帝斗にかかってた黒い煙が大体は晴れた。 さすが俺の手作り。効果抜群。 そのおかげで、見えた帝斗の顔。 妖艶に見つめてくる翡翠の瞳。 …何故友達に押し倒されないといけないんだよ。 俺がなにしたってーの。 男だぞ男。 一瞬でもドキッとしてしまった自分をぶん殴りたい。 今だ、妖艶に見つめてくる帝斗。 段々、顔が近づいてきた。 なに?キスか。 残念だけど………させるかドアホ。 「とり憑かれるなって…正気に戻れ。」 帝斗のおでこに符をペタッと引っ付け 「彼の者を浄化せよ。…『水蓮華-スイレンカ-』」
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