第二話

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ふわりと、帝斗の周りを冷たい風が一瞬通る。 その風は、一瞬で通りすぎて消えた。 まるで、今のは気のせい思えるほどに。 でも、確かに今の風は吹いた。 帝斗の、周りに残っていた黒い気も全て消えて、浄化された。 なにもかも、悪い気、悪霊、全て浄化して、全てを綺麗な気にする水蓮華。 残るのは、綺麗な気のみ。 俺も、あんなふうになれたらいいなぁ…… 光になって無くなった符を思いながらはっと気がつく。 いやいや、風を羨ましがってどーすんだ。 俺には俺のよさがある。 例えば………あるのか? と、ここで気がつく。 帝斗。 目前に迫った帝斗の顔。 今、祓ったせいで多分意識が飛んでいると思う。 支えるのは? \俺しかいない!/ 右手は? \符を持つポーズで押さえられない!/ 左手は? \床の上!/ つまり? グラリと力を無くし倒れてくる帝斗の顔。 もともと、俺にキスかなんかしようとしてきたポーズ。 と、なると……… 「───────ッ!?」 唇が、当たる。 キスだ。くそ、やられた。 自分の失態と、現状に思わず叫びたくなるが、冷静に冷静に。 右手で、帝斗の顔をずらして息を確保。 そして、左手で反対側を押さえながらゆっくりと床に下ろす。 上に乗ってる体は、体をずらして落とす。 ……もう、やだ。 俺のファーストキス…なんて女々しいことは言わないけど、なんだよこの偶然が重なりあったような結果は。 腹ただしい。 第一、自分だけが覚えてるのがムカつく。 いや、覚えられてたりしたらもっと嫌だが。 ちらりと、整った隣の顔を見て思う。 殴りたい。 ……犬に噛まれたってことで忘れるか。 とりあえず、帝斗をベッドに運ぼう。
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