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俺の意図を汲んだ和真は素直に自分で歩き出すが、何となく表情が暗くなっているのを感じる。
理由は分かっているが・・・
「零って美桜の事好きなの・・・?」
いきなりそんな事を聞いてくる和真に、小さく気付かれない様に溜息を溢す。
そんな風になるなら名前で呼べなんて言わなきゃいいのに・・・とは思っても口には出さない。
「なんでそうなる訳?」
しかも俺自体は名前で呼ぶ事を渋ってたのを忘れたのかと言いたくなる質問で、どういう思考からそうなったのか問い詰めたくなる。
「だって・・・
あんなに可愛くて良い子はなかなかいないし、名前で呼ばなかったのだって恥ずかしいからとかじゃないの?」
身長は俺の方が高いせいか少し上目遣いで、心なしか瞳がうるうるしている和真を見てお前も可愛いがな、と思う。
本人には間違っても可愛いなんていうのは言わない。
可愛いって言われると怒るのは知ってるし。
「名前で呼ばなかったのは、お前がそうなるって思ったからだ。」
「・・・えっ?」
俺が言った言葉に対して和真は大げさなほど驚いた顔をする。
「・・・そんなに驚くところか?
普通に考えて好きな女の子の事を、違う男が呼び捨てにするのを見るのは嫌だろうとの配慮だったんだが。」
俺の言葉に対して和真は先程以上に顔を真っ赤にさせながら、キョロキョロしてかなり挙動不審な感じになる。
「ぼぼぼ僕、みみ美桜を好きなんて一言も言った事、ななな無いよ。」
動揺しすぎだろう、と思う。
流石、隠し事出来ないだけはあるな。
和真は素直過ぎる。まぁ、それが良い所でも悪い所でもあるんだが。
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