1-1.平穏な生活

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進路指導室まではあまり離れていない為にあっという間に着いてしまう。 小さく溜息を吐き出す。 かなり面倒臭い。 しかしいつまでもドアの前に突っ立ている事も出来ないし、意を決してドアをノックすると中から「入れ~」と橘さんの声が聞こえた。 このままここで引き返したい気持ちに駆られるが、優等生として学校に通っている為そんな事は出来ない。 「失礼します。」 教室に入ったら無言で座れと促された為、橘さんの正面にあった椅子に腰掛ける。 橘さんは机に置いてある何かの書類を見ながら、俺が居ないかのように無言を貫く。 「俺に何か御用ですか?橘先生。」 流石にそんな沈黙が漂った教室にずっといる程、酔狂な訳でもないし即刻話を進めるために橘さんに問い掛ける。 「・・・ぅん~? 何なんだろう~いっつも感じてたんだが~東雲に橘先生って呼ばれると違和感を感じるのは?」 俺が橘さんを呼ぶ時に実際に口にするのは橘先生。 俺以外の生徒達は橘さんの気安い感じから愛称とかで呼ぶ事はあっても、俺は一度たりとも橘先生以外で呼んだ事は無い。 真面目な優等生が先生の事を先生と付けずに呼ぶのも違和感あるだろうしな。 まぁ、こうして頭で考えてる時だけは橘さんだが・・・ しかしやはり感が良いのか橘さんは俺に聞こえるのも承知の上で独り言の様に呟く。 何で先程から俺を呼んでおきながら、俺が居ない様に扱うんだろうか・・・ ムカついたりとかは流石にしないんだが、こんな何を聞かれるかわからない状態は正直言って勘弁して欲しいってのが本音なんだけど。 「そんな事言われたって・・・ じゃ俺はどう呼んだら良いんですか?」 俺がそう問い掛けたところでやっと真面目に俺に視線を向けて来る。
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