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それはうさ耳だ。真っ白い長いうさ耳。それだけが異質さを放っている。
その女の子は田中の隣に来るとチョークを取りスラスラと手慣れた様子で黒板に名前を書いた。
夜叉姫咲夜。
俺は無意識の内に教室から抜け出すべくこっそりと気づかれないように扉に近づこうとしていた。
「私の名前は夜叉姫咲夜と思うします。以後お見知りおきを。後――」
自己紹介を手早く済ませる夜叉姫は、一瞬ため息をついた後視線をこちらに向けた。
というより向けたのが分かった。
「秋斗さん、貴方は一体何をしているのでしょうか?忍ばれるのでしたらもう少しバレないようにして下さい。ああ、後校長を狙撃したのは私です」
「おまえかぁああああああ!!」
夜叉姫はさらっとカミングアウトをかました。というか大体この女は無表情でとんでもない事をカミングアウトする。
「まったく……。7年ぶりに帰国してみれば許嫁から逃げ出そうなどと。あ、もしかして愛人でもできましたか?」
「できてねぇよ!」
俺は天に叫ぶ勢いで叫んだ。
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