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なんやかんやで、黒木冬矢に助けられた俺、柊雪は今、広いベッドの上で最大のピンチを迎えています。
「くっ…!来るなぁ!!俺に近寄るなぁ!!」
「何をバカな事を言うんだ雪は!!」
「バカで結構!!あっち行けーーー!!って……あっ……ちょっ……やめ……!!」
「五月蝿い!少し大人しくしてっ!!」
黒木は雪の細い腕を掴みあげた。
雪のボロボロになった服は、先ほど借りたシャワーを出た後には既に捨てられていた。
かわりにバスローブが置かれていたため、羽織ってみた。が、今の乱闘騒ぎでローブの肩はずり落ち、上半身が露わになり裾も開き足も大股開きだ。
そんな雪に黒木はのしかかっている。
「ひぃぃ!!ホントにそれだけはヤめてっ!!」
顔を蒼白にして涙目で訴える雪を目の前にして黒木は綺麗な顔でニコリと笑った。
黒木の手には赤チン(消毒薬)が握られていた。
「だ-め-。」
うぎゃぁぁぁ!!!しぃ-みぃ-るぅ-!!!
綿に染み込ませた赤チンをピンセットで器用に傷に塗っていく。
そう。忘れているかも知れないので念のため言っておこう。
俺の体は黒木に命を助けて貰った時には、既に顔以外が傷だらけでボロボロの状態だったのだ。
シャワーを浴びてキレイにしたというのに、この男はばい菌が入ったらダメだと俺の大嫌いな赤チンを取り出してきたのだ!
せめて、あまりシミない消毒薬のママロンにしてくれたらいいのに。
赤チンは兎に角、シミて痛いから嫌いなんだ。
「うぉおっうっ!しぃみぃるぅーー!!」
「五月蝿い。ぶっかけるよ?」
ひぃぃ!!天使の顔をした鬼がいる!!
「だいいち、こんなに傷だらけの痛みには堪えられて、少しシミるくらい我慢出来ないの?」
「痛いのとシミる痛さとは違うんだっ!!せめてシミにくいママロンにしろ!ママロンに!!」
「そんな生易しい物はない。」
逃げ回る雪を器用に転がして、黒木は赤チンを塗りこんだ。
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