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「…いやぁぁあぁっ!!」
雪の悲鳴で、黒木は目が覚めた。
部屋に一つしかないベッドで雪が先に寝たものだから、隣の部屋のソファーで眠ろうかとも思った黒木だったが、疲れていた黒木はやはりベッドが一番だと雪の隣で寝る事にしたのだ。
黒木の隣で悲鳴を上げた雪は、全身が汗だくで、胸を掻きむしるような仕草をして呻いていた。
尋常ではない汗の量。
苦しそうな悲鳴に似た呻き。
「雪っ!!」
全身が汗だくになった雪の体を激しく揺する。
「うぅ…やだ!さ…さき…やめっ…!!」
「雪っ!!しっかりして!!大丈夫だから!」
なだめるように喋りかけるが、体を震わせながら。イヤイヤをする雪。
「いやだぁあぁぁぁ!!!」
「雪っ!!」
悲鳴を上げる雪が痛々しくて、黒木は雪の身体を優しく抱きしめた。
「大丈夫だから…。」
すると、あんなに暴れていた雪は急に大人しくなった。
そして、硬く瞑っていた瞼(まぶた)をゆっくりと持ち上げた。
初めは怯えていた瞳が、黒木を写した途端に安堵の色を帯びる。
「……くろき…とおや…。」
「うん。俺だよ。大丈夫?」
心配気に顔を覗きこむと、先程まで青く血の気の悪かった雪の顔が一気に赤くなった。
例えるならば、茹で蛸状態だ。
あわあわしながら雪は黒木をチラリと見る。
「…俺、何か行ってた?」
「ううん。うなされてただけだよ。」
「そ、そうか。それならいいんだ。怖い夢見ちゃっただけだから、大丈夫だよ。ごめんな!」
ホッとする雪を見て、黒木は本当の事は言わないようにした。
だって、夢でこんなに魘されるって余程の事でしょう?
だから、今は黙っていよう。
「雪、汗拭いてあげるからもう一度寝よう。」
時間はまだ夜中の2時だ。
叫び疲れたのか、体を拭かれて服を着替えた雪は、すぐさまベッドに潜り込んだ。
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