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浮いているような感覚。
「…俺、ちゃんと死ねたのかな……」
「いや。死んでないぞ。」
「へっ?」
間の抜けた返事をした俺の目の前に、綺麗な顔をした男の顔があった。
背後に白い羽根でも舞っていそうな、その綺麗な顔の男が俺の腰をガッシリと掴んでいた。
抱っこですか…。俺、細身だけど、男に抱きつかれてるとか。変じゃない?
「天使って男!?女の子のイメージ崩さないでくれる?」
「馬鹿な事言ってるんじゃないよ。動くとホントに落ちるよ。」
言われて下を見てしまった。
足は宙ぶらりん。
綺麗な顔の男の腕のみで支えられている状態で。
………。
「うわ゛ぁお゛ぉおおう!!」
「えっ!?ちょっ、危なっ!」
思わず叫んで、綺麗な顔の男の頭に抱きついた。
全部棄てる覚悟はしたのに…。人間って意思の弱い生き物なんだな。というか、俺の意思が弱いだけか。
落ちないように綺麗な顔の男に必死にしがみつく。
「ちょっ!ホントに危ないから!俺も落とす気!?」
しがみつかれたせいでフラフラしてしまった綺麗な顔の男は、慌てたように俺の体を引き上げて2人して手すりの内側に転んだ。
「ほら。立って。」
差し伸べられた手をとって立ち上がったが、体中が痛い。
元からボロボロだった傷のある体と、疲労と、助かった安心感と。
この手の温もりと……。
今度こそ、俺の意思は闇に沈んだ。
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