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だが、今回はかなり怒っているようだ。つもりに積もった物が一気に噴火したのだろう。
それを察したのか、金城は、まるで瞬間移動したかのようにばっと地面に座り、全力で土下座した。そして、さすがに夏美の靴はなめることは出来なかったが、全力で謝っていた。
それを見て、僕は何だか涙が出そうになった。称えてよう――この無様を晒したが僕達に感動を与えてくれたこの英雄に、敬礼しよう!
僕は心の中で敬礼する。金城に届いただろうか。否、届いて欲しい……。
なんてくだらないことを全力で妄想している僕。そんな僕の真横で、全力で謝る金城。
……うーん、僕もそうだが、何ともくだらないことか。
赤木は、許したのだろうか、金城のその情けない姿を見て、
「……チッ。ツマンネーナ」
と、言って、再び椅子に座った。
金城は自分の命が助かったのかしばらく硬直して動けなかった。
よほど怖かったのだろう。僕にもどれだけ怖かったか分かる気がした。
自分の腕をさすらなくても分かる――鳥肌がまだ立っていた。
「早く座りなさいよ。周りの人に迷惑でしょ? 全く、こんなみっともない人を見ると情けなくなるって周りはそう思っているわよ」
赤木は何事も無かったかのように金城に注意していた。
金城は納得しなかったのか、さっきまでの硬直が嘘みたいに解かれて、赤木の前に立った。
「いや、待てよ! 一番みっともないことしていたのはおま……」
「あぁ?」
ギラリと光る赤木の眼光。
それに威圧された金城。
金城は、
「何でもありません」
と、怯えながら言って席に座った。
よろしい、と言う赤木。結局、今までの赤木の行動が何も無かったことにされてしまった。
結果、金城の恥部が周囲に晒され、また金城の人間性を疑われるという悲惨な結果になってしまった。
そんな金城は、丼の中で無残にも真っ二つになった海老の天麩羅を眺めてから、それを取り出してティッシュに包んで盆の端に置いた。
もう海老の天麩羅は当分食べられないだろうな――と、僕は金城を見ながら、ご愁傷様と小さく呟いた。
だがしかし、そんな金城と赤木の仲の良さに僕はちょっと羨ましいと感じてしまうのであった。
「それはそうと、本当にあたしは全部食べられないから、みんな手伝ってよー」
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