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「摩耶……あなたはこの状況がワカラナイノ……」
効いている様子が全くない。これはもう終わったか?
だが、木戸は全く動じていなかった(というより気がついていないように見える)。天然の――もとい木戸の武器であるその微笑みで、赤木をなだめる。
「ほら~、そんなこと言っちゃ駄目ですよお。せっかくの可愛い顔が台無しになっちゃう。だから、ほら、この唐揚げ食べて元の可愛い夏美ちゃんに戻って。二人とも戻って欲しいって思ってるんだよ」
木戸が、そう言うと、赤木は僕らの顔を睨んだ。
どうして僕らに振ってくるんだよ! と木戸の予想外の言動に僕と金城は一瞬で理解した。そして僕らは互いに口裏を合わせながら、
「そ……そうだよ! 赤木は可愛いから戻って欲しいなあ。さっきだって勉強している赤木に見とれて教授に注意されちゃったし……でもしょうがないよなあ! だって赤木は可愛いから。……なあ、金城!」
「えっ? あっ……おっ……おう! そうだ! お前の可愛い顔でご飯三杯は余裕でいけるぜ! やっぱ美女の笑顔が最高のおかずってな!」
と、下手くそな演技で赤木を誉める。まあ、下手でも平常心が無くなっている赤木のようなタイプには充分効くのだろう。むしろ効いて欲しい。
しかし、何故だろう。金城が「おかず」と言うと、逆に卑猥に聞こえてくるが……まあいいか。
僕は、そんな関係ないことを思いながら赤木が元に戻るのを待った。
すると、阿修羅の顔をしていた赤木の顔が徐々に普通に戻っていくが分かった。
「そ……そうかしら? あんた達って本当にお世辞が上手よね……」
徐々に赤面していく赤木。これは完全に照れている。
「ほらね! やっぱり可愛い! そうでしょ、二人とも?」
木戸の合いの手に僕らは合わせる。
ブンブン、と勢いよく、脳が揺れるくらい頷いて、絶対そうだ! というアピールを繰り返した。
「可愛いぜ! 可愛いよ赤木! お世辞なんて言うな! 自信を持って自分は可愛いと皆に見せびらかすんだ! 皆絶対納得するから!」
金城が、これでもか! というくらいのフォローを言う。
もう赤木には充分だったようで、赤木からはもう怒りの感情は消えているようだった。
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