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「ふ……ふーん。そ……そうよね! そうよね! だって講義中にあたしに見とれるくらいなんだからそう言われてもしょうがないわね!」
そして、木戸が差し出す少し冷めた唐揚げを頬張った。
唐揚げが冷めていても赤木は、
「うーん……美味しい!」
と、満面の笑みで答えた。
木戸もそれを見てやたら嬉しそうだった。
まあ、確かに赤木は、それなりにしていれば本当に可愛いから、あながち木戸の言うことは間違いではない。後は、その性格をどうにかすれば本当に男子が寄ってくるのは確実だろう。僕が言うのだ。絶対そうだ。
機嫌が良くなった赤木。金城は、赤木に聞こえないように小声で僕に話しかけてきた。
「前も木戸が赤木を押さえていたんだっけか?」
そんなことを聞かれても僕には知る由も無かった。
僕はそう答えると、金城は、
「だよなあ……覚えてないんだよなあ」
と、答えた。
「まあ、赤木の暴走は人の記憶を消してしまうほど悲惨な物だから忘れても仕方ないんだろうけど」
僕がそう言うと、金城は納得した顔で、
「そうだな。まあ、対処法が見つかって良かったわ」
と、答えた。
これから赤木は木戸に任せておこう――僕らはそう思った。
そして、それぞれの食事が再開される。
食事が再開されたのは良かったものの、突如、金城は手のひらを僕の眼前で構えた。
「……何?」
「四百円。カツ丼代金よこしな」
……僕の今月の食事から味噌汁が消えた瞬間であった。
和気藹々と食事をしている最中、急に赤木が、話題を切り替えてきた。
「そう言えば、あんた達、木暮教授に呼ばれたんでしょ?」
「ん? ああ、そうだけど」
金城が、最後のカツを口に放り込みながら答えた。金城は五秒もしないでカツを呑み込んだ。……噛んでいるのだろうか、とふと疑問に思ったが、金城の事だから気にしないでおいた。
「で、どうだったの? 木暮教授の個人レッスンは?」
赤木が興味津々に尋ねてくる。
しかし、金城は少し苛立った顔をしながら赤木を正した。
「おい、赤木……お前は少し間違いを犯している」
「はっ? 一体何よ?」
「お前は個人レッスンという言葉の使い方を間違っている」
「何で? 別に合っているじゃない」
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