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次に着いたのは、先ほどより少し大きな青い屋根の家だった。
また袋の中を探っているおじさんを横目に、俺は窓から部屋を覗きこんだ。
豆電球の微かな光に照らされて見えたのは、
風邪をひいたのか、おでこにヒエピタをのせて眠る少女と、
ベッドに乗せた両腕を枕にして眠る、父親の姿だった。
「父さん………」
顔も覚えていない父さんが恋しくなった俺は、無意識にそう呟いていた。
それまで特に父さんがいないことを寂しく思ったことはなかった。
だけどその時、初めて父さんのことを何も知らないことを悲しく思った。
俺が今さら何を思おうが、
父さんに会って、話して、抱き締めて貰うことはできないのだ、と思うと、
まるで完成間近パズルが1ピース足りないような、
言いようもない喪失感を感じた。
「どうかしたのかな?」
ぼーっと窓の中を眺める俺に気付いたおじさんは、
プレゼントを抱え、優しく微笑んだ。
「ねぇサンタさん。ぎゅってして?」
「ふぉふぉふぉ、おかしな子だ」
大きなお腹、背中に感じたゴツゴツした手。
優しい温もりに包まれて、何だか満たされたような気がした。
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