序章【ウェンデルの涙】

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「んー……言い伝えによるとウェルデールが出来るもっともっと前からこの地にある秘宝みたい。 ウェンデルって海を作ったと言われる神様の涙なんだから、きっとすごいのに決まってるよ!」 想像に想像を膨らませる少女の表情はさぞ幸せに満ちているであろう。 皮肉にも、それを横目で見つめるレオルにとって見れば金になるか、ならないかの二択に過ぎない。 (ハミィはどうしてこう……こんなにも無邪気なのかねえ) 自分と頭一個分も背丈に差のある少女を見つめるレオルの表情も、気づかないうちに綻んでいた。 トレジャーハンター。 世界各地に眠るお宝というお宝を探し求める旅の職業。 ある時は遺跡を、ある時は山を、ある時は宝物庫を。 半分泥棒まがいな性質を持っているため、世間からは良く思われていない職業の代表例でもある。  夢を追い求める者が行き着く、終着点とも言えよう。 レオルと、ハミィと呼ばれた少女。 二人は共にトレジャーハンターを生業としており、同時にパートナーでもあるのだ。 「でもこれで金にならなかったら今日の宿代も無いぜ? やっぱり計画性って大事だよな、うん」 「お金はなんとかなるからいいの! 本当に夢も希望もない捻くれちゃんなんだから。 まあ、計画性が無いのは認めるけど……」 二人はそれなりの実績を持つ有名なトレジャーハンターでもあった。 過去には世界に30匹と棲息しない希少なエメラルドワイバーンの角だったり、非常に凶暴な気性で知られるベアウルフの牙だったり、時には漆黒の森にしか生息しない黄金魚を捕まえてきたりなどなど。 トレジャーハンターの情報に精通している者であれば、二人の名を知らぬ者はいないであろう。  それは若さも大きな理由の一つである。
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