嫉妬

4/40
前へ
/148ページ
次へ
それが見事に僕の足にぶつかり二次被害を発生させる。痛いよ。 振り向けばぶつかってきた側は、尻餅をついて、うう、と唸っている。それから、強く打ったと考察できるお尻を摩りながら立ち上がる。 流石にこの状況では無視するわけにもいかず、仕方なしに声をかける。 「あのー、大丈夫ですか? どこか痛い所ないですか?」 「あたしの行動見ていて、痛くないように思える? 痛いに決まってるでしょ!」 バカじゃないのこの人、とでも言いたげな目線を送られつつ怒られる。こういう人がいるから、知らない人と話すのは嫌なんだよ。ただの社交辞令みたいなものじゃないか。 早くこの場を去りたくて、自転車にまたがと、ペダルを再び蹴った。 「本当にすみませんでした」 そう言って、逃走しようとすると、自転車が思うように前進しない。なんだよ、と背後に顔を向けてみると、荷物などを乗せるキャリアを先ほどの女性にがっしりと掴まれていた。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加