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どうせ、何を言っても手伝うことになると分かっていたが、理由だけは聞いておこうと質問する。
「えっと、どうして逃げるんですか? あと、なんで僕なんですか」
「どうしても何も。あのクソマネージャー、くる仕事くる仕事全部、勝手に受け入れちゃうのよ。あんたを選んだのは偶々よ。しいて上げるなら自転車持ってたから」
芸能人の世界も大変だなあと同情しつつ、だったら他の人に頼めよ、と腹立たしさがこみ上げてくる。
なら、他の人に頼めよな。お金いっぱい持ってるんだろ。だったらタクシーとか使えばいいのに。
と、強気で言えるわけもなく、下手に反論する。
「だったら、タクシーとか使ったらいいと思うけど。そっちの方がきっと早いよ」
「お生憎、あたしの財布全部置いて来ちゃった。だからあんたに頼んでるのよ」
赤い舌をチョロリと出して、手を合わせ頼み込んでくる。そういう行動を取られてしまうと、無下に断ることができなくなる。
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