嫉妬

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もうすぐで峠を上りきろうという所に、本日僕が行くはずだった学校が目に入ってくる。遠目から門番がいないのを確認して、一気に学校を通り過ぎようとした瞬間だった。 ある人が目に飛び込んできた。つややかな髪を腰まで垂らし、アイドル顔負けの相貌を持った彼女。 ――ユキ。 僕は彼女の本名を知らない。そして、彼女も僕の本名を知らない。 それでも、唯一僕が学校に登校する理由はユキがいるからである。 咄嗟にブレーキをかけて、自転車を止める。もちろん、そこには慣性の法則が働くわけで、後ろに乗っていたアイドルが背中に寄りかかるようにして抱き着いてきた。 その光景にユキは一瞬顔をしかめるものの、すぐに踵を返して学校へと入っていく。
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