1.ふたり

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 外へ一歩足を踏み出すと、室内に充満していた暑さの比ではないくらいに、ねっとりとしていた。  ガレージから自転車を引きずり出して股がる。そして、ペダルを勢いよく踏み出し走らせる。  無機質の無個性の緑色のフレームの自転車は、今日も今日とて順調なようだ。  自家から高校まで、自転車をゆっくりと漕いで四十分くらいの距離にある。今からなら、学校の始業チャイムまでには十分間に合う。  代わり映えのない町並みを見ながら、人にぶつからないよう出来るだけ右に寄る。
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