嫉妬

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ん? どっかでも見たことがあるぞ。しかし、あんな綺麗な顔立ちの女性で僕が知っているのはユキくらいだ。うーむ。 暫く、顎に手を当てて思考をフル回転させる。どこかで、どこかで、見たことがあるんだけど、どこだっけ。 あーでもない、こうでもない、と頭を上下に揺さぶりながら考えると、太ももに目がいく。少しばかり青くにじんでいるのだ。 なんでこうなっているんだっけ? たしか、朝自転車に追突されて……、とそこまで記憶をさかのぼって、あっ、と声をあげる。 「……アイドル忘れてきた。やべぇ」 なぜ、今まで忘れていたのだろうか。これまでめんどくさい人との約束を忘却したことなかったのに。 時間は既に夜の七時を回っている。 再度TVに目を向けると、画面に映っている彼女の下に芸名が書かれている。 『和束伊根』これで、わずかいねと読むらしい。漢字の上には小さく平仮名がふられていた。
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