嫉妬

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そんな夜空を仰ぎながら、はあはあ、と荒い息遣い。この状態で女性の下に駆け寄ろうものなら間違いなくアウトである。逮捕である。 しかし、そんなことに構っている余裕などない。なにせ、相手は有名なアイドルだ。もしもの事があれば、全国から誹謗中傷の嵐である。 吹き抜ける生ぬるい風に頬をなぶられながら、せかせかと和束の元へと急ぐこと、十五分。ようやっと目的の廃工場に着いた。 昼間と違って今にも幽霊が飛び出してきそうだ。幽霊が出没した話なんて聞いたことないんだけどね。 こんなところにいつまでも待っているわけないよな、と自分の心に言い聞かせるも、やはり気になって廃工場の中へと歩みを進める。辺り一面真っ暗で、懐中電灯を持ってこなかったことを後悔した。 仕方がないので、それの代用として携帯に内蔵されているフラッシュを常時点灯に切り替える。
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