嫉妬

29/40
前へ
/148ページ
次へ
なんとそこには、逆三角の白い布を頭に身に着けた幽霊などおらず、生きた見目麗しい女性が目を手で押さえていた。 明らかにその人は、有名アイドルの『和束伊根』である。 昼間はニット帽で顔がはっきりとは分からなかったが、今は外されてほりの深い顔が露になっている。不覚にもTVで見た時よりも美人だと感じてしまった。 「……や、やぁ。いい子にしていた? 元気にしていた?」 どう声を掛けたものかと、困ってしまった結果これである。日常でコミュニケーション能力を試されるような場面なんてあまりないからなあ。 「……えて……うっ……やる」 こちらの質問をオール無視で、和束は一人ぶつぶつと呪文のように何かを唱えている。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加