嫉妬

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僕にはユキがいる。それに今はケンカ中だ(こっちは全然怒ってないが)。他の女性を抱きしめるなんてもってのほかである。 だがしかし、この場合はむしろ優しく抱きしめるのが男の性ではなかろうか。 そういう感情が二律背反して、最終的に、 「もう大丈夫だから泣かなくていいよ」 肩を軽く叩いて、行こうと促す。 僕はどうしようもない男だと自覚している。だからせめてユキに対してだけは、優柔不断な男になりたくない。真っ先に彼女を優先する。これが僕の信念だ。 だから、君にこれ以上のスキンシップをするつもりはない。これ以上の優しい言葉を掛けることはできない。 泣くだけ泣いたおかげで大分落ち着いた和束は、うんと小さく頷くと、服の裾を掴んできた。そして、僕の歩調に合わせてヨタヨタとした足取りでついてくる。
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