84人が本棚に入れています
本棚に追加
今更だけど、どこに行こうかしらん。アイドルを僕の家に招き入れるなんて滅相もないし、やっぱりマネージャーに来てもらうのが無難か。
「和束さん、マネージャーさん呼ばない? もう、こんな時間だし、きっと心配しているよ」
「いやだ。せっかくここまで逃げてきたのに楽しいこと何もしてない」
子供みたいに、首をぶんぶんと横に振る。それもそうなんだけどさ、と反論したくなる気持ちをグッと抑える。元はといえば僕の所為でもある。もっと早く彼女を迎えに来てあげられていれば、娯楽施設の一つでも連れて行ってあげられたかもしれないのだ。
「マネージャーさんに頼めば、きっとそれくらいの予定開けといてくれるよ」
「あいつは、そんな時間があればあたしに仕事をしてもらいたいのよ。どうせ、あたしなんか――金のなる木程度にしか思ってないのよ」
その言葉を聞いた瞬間、ああこの子もつらい思いをしているのだと感じた。だけど、慰めることは僕にはできない。
最初のコメントを投稿しよう!