嫉妬

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語りながらユキの事を思い出していた。和束にあたるのはお門違いとは分かっているが、どうしても言わずにはいられなかった。 「あんたに何がわかるのよ。こっちがどれだけ辛いスケジュールで動いているのかも知らないくせに」 ナイフのように鋭い視線がこちらに向けられ、ひるみそうになる。 そうだとも、僕は何も知らない。知ろうとも思わない。そして、これからも知る努力をしない。 それでもやっぱり、あのTVで見た和束さん楽しそうに見えた。彼女の笑顔で元気を貰っている人だって絶対にいる。 今までユキ以外に見惚れたことがなかった僕でも、和束の面貌に立ちすくんでしまった。 「けどそれでもやっぱり、頑張って欲しい」 ただの僕の希望。頑張れるよ、などとは決して言わない。それは無責任な言葉だと思うから。なので、あくまでも僕の願望止まりである。
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